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logとか突発的に書いたものを掲載しています。

Vedi come sono pazzo di te?

「ね、ねぇ、兄ちゃん…?」



恐る恐ると言った感じでイサミは意を決して兄であるタクミに問い掛けた。
容姿端麗、稼業のイタリアンレストラ ンを統べる程に料理の才能にも富んだ彼は寝呆けているのか切れ長の青い瞳を虚ろにして弟のイサミの髪を弄ぶ。
時々わざとだろうが耳に息を吹き掛けたり耳元 で囁いたり、な事をこの遠月学園寮の二人っきりの個室でしているのだから不健全極まりない。とイサミは思う。
肩や身体がゾクゾクして何とも言いようのない気持ち良さが自分を懐柔しているのは唯一無二の血肉を分けた双子の兄であり、男だ。
綺麗な顔立ちをしているのだから女性からも熱い視線を贈られファンクラブまで在籍しているものだから吃驚だ。
同じ両親から生まれたのにも関わらずいつからこうも兄と離れてしまったのか。
寂しくもあり、此処―遠月学園―で兄であるタクミには夢を叶えて貰いたかった。



「何……してくれてるの?」
「ん―――――スキンシップ?ハグだよハグ」



額から始まって瞼、目尻、頬、首筋など余程兄弟のスキンシップとはほど遠い。そして。



「あ、っ…?」



次第にタクミ曰く兄弟のスキンシップ―度を超えているようにおもったけど―。



「なに?どうした?」



くつくつ笑う意地悪な実兄。



「どうして欲しい?」
「そんなこと望むなら出て行ってよ。僕も忙しいんだから。それにそーゆー事をしたいなら弟じゃなく綺麗なお姉さんとか煌びやかなお店へ行けば会えるよ」
「は?さっきのは……お前が可愛かったから…つい触りたくなってだな」
「兄ちゃんも女性は苦手な方なんだね」



そうニヤッと兄に話して見るとそれ以上の兄の超弩級のドエスな笑みが帰ってきた。



「興味ないね。そんなの。あんな黄色い声で喚く生き物好きになれっての?お前は」
「苦手意識克服しなよ。せっかく…顔が良いんだからさ。勿体ないよ」
「ふぅん…そんな可愛くない事を言う口は」



カタリ、と兄は座っていた椅子から立ち上がり僕の座っている席まで身を乗り出して来て…。
嫌な予感がすると思って反射的に身を引こうとするけれど兄ちゃんの片手が僕の腰を支えてるので自由に抵抗が出来ない。



「兄ちゃん…?」
「イサミ……」



嗚呼もう。こんな時だって兄ちゃんは綺麗な美丈夫だから。
妬けてくるよね。
そう思った時には時既に遅し。兄にキスをされてしまった。
最初は親しい者が敬愛や感謝の意を込めてするような優しいキス。
だけど次第にまるで訳が分からないような理不尽なキスの雨が降ってきた。



「んっ……」



僕は恋愛も女性とのそういう色ごとの経験なんてない。だがこれだけは解った。兄ちゃんは恋人にするキスを僕にしているのだ。
兄ちゃんの熱い舌が僕の唇を舐めて口腔への侵入を促す。狡い。拒む理由なんてないのを解った上でこんな………。
卑猥な水音が寮室内に響いた。僕はと言えば酸欠状態になっていた。
兄も僕が苦しがっているのが伝わったのか、数分で解放してくれた。



「っ、げほっ!げほっ!」



与えられた酸素を思い切り吸おうと夢中になっていると当の原因の兄ちゃんは澄ました顔で『色気ないな』なんて呟いている。
あってたまるか。
此処が寮室内で良かった。教室や学園内で兄ちゃんの悪戯が行われない事を祈ろう。





そんな視界のまったく見えていない僕たちの関係がこれからどうなるかなんて今はまだわからなかった。



end.




(俺がどんなに君に夢中か分かる?)>>title by 縁繋